「消えた年金?」問題について

 はじめに、現在、公的年金の加入・納付記録に関して、国民の皆様に多大なるご不安とご迷惑をおかけしていますことに、政府与党議員の一人として事実を真摯に深く受け止め、深くお詫びを申し上げます。 
 この度の問題は、1998年に基礎年金番号の制度の導入に端を発したといえます。しかし、この基礎年金番号等の社会保険の番号の一本化の導入については必要であったと思います。それまでは住所が変わればそのたびに年金番号をもち、また、結婚や離婚をすればその都度、新しい年金番号を持つことになっていました。そのような複雑な仕組みで、管理・掌握が行われていたこと自体に疑問を感じます。それらを簡素化・一本化することが本来の目的であったのです。 
・我々政治家も多くの国民の皆様も年金について知らないことが多々あった約10年が経った今日、何故このような問題が起こってしまっているのでしょうか。 
 様々な要因が考えられますが、先ず、私をはじめとする国民の多くが非常に複雑な公的年金の制度に対する理解不足があったのではないかと思います。恥ずかしながら私自身も会社員時代には、自分がそれまでに幾らの金額を納めているのか、これから受給されることになるまでにどれ程の額を納付することになるのか理解していませんでした。年金の知識は社会人として常識であるかのような風潮は確かに存在していましたが、果たしてどれ程の人が正確に理解をしておられたでしょうか。制度が改正につぐ改正の結果、「ばんそこうだらけ」に程非常に複雑であることに加えて、社会保険庁や政府は国民に理解し易いように周知させる努力を怠っていた点は否めないのではないでしょうか。 
・いわゆる「行政サービス」とはほど遠い実態 
 いったい自分がどれほど保険料を納めたのか分からない。尋ねてもすぐ分からない。納めた保険料に対して、いったい、どれくらいの年金がもらえるのか分からない。経済成長率や法律による5年ごとの見直し、こうしたことが背景にあることはありますが、しかしながら行政サービスを提供する官庁として社会保険庁はあまりにも親切心に欠けていたと思います。 
 こうした一連の流れの中で、象徴的であるのが「申請主義」であります。 
 年金を受け取るには、こちらから受給の申し出をしなければ年金はもらえない制度となっています。そして、その受給の申請については社保庁より58歳で確認通知と、受給年齢になる前に受給申請の意思表示となる裁定請求書が登録住所に送られてくることになっていますが、居住地の住所変更等についても、本人が申請をしない限り、社会保険庁では対処がされません。しかし、そのことを変更の処理が生じた際に国民が知る機会が用意されていないに等しい、まったく配慮に欠ける仕組みになっており、それらにより過去には受給ができないケースも発生しているのです。 
 要約しますと、自ら記録の不備を調べることなく、国民が申し出て初めて動く。保険料を納めさせながら、言って来なければ、何もしない。年金も支払わない。これで当たり前としていたわけであります。 
 勿論、すべての国民に対して必要以上に細かな対応をすることは不可能ではありますが、あまりにも不親切であり、手続きや申請の方法はもとより、申し出ることさえ全くご存じない方がいらっしゃるのも事実であります。そのような現状にもかかわらず、期限が過ぎていれば「ルールですから」と一切受け付けない。こんなことは民間では考えられないことです。お上という言葉の意味を履き違えていると断じざるを得ません。「公僕」という言葉が聞かれなくなって久しいですが、社会保険庁は「役人」=「国民の役にたつ人」であるべきであるという基本を忘れてしまっていたのではないでしょうか。 
・労働組合と三重構造の人事体制などによる膿が溜まっていたこと、そして隠蔽体質
 どうしてこれ程までに、数ある行政官庁の中で「社会保険庁」の行政サービスが突出して悪かったのでしょうか。そのことの大きな真因であると指摘されている問題がマスコミ等により報道されています。それは、社会保険庁固有の労使問題です。 社会保険庁の職員の約9割は労働組合の自治労・国費評議会に加盟しています。(勿論、民主党の有力な支持団体であります。即ち、民主党は「年金問題」を参院選での政争の具として、国民の煽動に躍起ですが、効果的な問題解決の具体策は今後も一切示すことは出来ないのです)その労組と社会保険庁は、労働条件などについて過去に「覚書」を交わしていたというものです。その内容を知ったときには愕然としました。以下、産経新聞の記事の抜粋です。「昭和54年3月に労組と社保庁が結んだ「覚書」にある。その後、平成16年までに双方がかわした文書は、A4判で計105ページ。昭和54年の「端末機の操作にあたりノルマを課したり、実績表を作成したりしない」、平成14年の「昼休みの窓口対応は職場で対応できる必要最小限の体制で行う」など勤務をできるだけ軽減しようとする表現が目立つ。時間配分や仕事量も具体的な数字で制限。「コンピューター端末の連続操作時間は50分以内(のちに45分以内)とし、15分の操作しない時間をつくる」「1人1日のキータッチは5,000以内とする」ことなどが取り決められた。」であります。そして、その覚書は平成17年まで有効であったというのです。公務員の労組には協約締結権はありません。覚書は法的な効力はありません、では何故内容の見直しもされないまま最近まで放置されたのはなぜか
 ひとつには社会保険庁の三重構造の人事体制の問題があるとおもわれます。 社保庁のトップには30人ほどの厚生労働省から出向するキャリア組です。それに次ぐ中間的地位に900人の社会保険庁採用組がいます。そしてその下に、地方採用組、約15,000人が現場にたっておられます。かって私が県会議員であったとき、健康生活部会という会議が良く開かれました。20人近い課長がおられるなかで唯一ひとり絶対に質問されない課長がいました。保険課長です。その型は唯一、国家公務員だったんです。知事の人事権が及ばなかったのです。ですから、デスクをおいておられたというだけ、国の事務に携わっているとゆうことで県議会にとっても聖域化された部署でした。今になって考えてみると、国からも地方からも目が行き届かないところであったと思います、つまりノーチェックでいられたところです。率直に私たちも反省しなければならない点があります。約9年前まで採用されていた「地方事務官」という制度も点検機能が作動しなかった一因であるかとおもわれます。「地方事務官」は給与は国費から支給されますが、立場は各都道府県の知事部局の下におかれていました。これでは地方からは指示を出しづらい聖域となっても仕様がありません。三層構造の風通しの悪さは、年金記録紛失を今日まで放置した大きな要因であったのではないでしょうか。
 また、自民党年金問題緊急調査対応委員会で、基礎年金番号導入時の社会保険庁長官、佐々木典夫氏は「退任時に統合の進ちょく状況をつかんでおらず、後任に引き継げなかった」と語っていました。社会保険庁という官庁自体が隠蔽体質であった点も強く指摘できると思います。 
・政治の情報収集力の無さを反省、国民の信託に応える組織・制度へ 
 そのような、様々な問題に関して政府、そして長期の政権与党の責任政党自民党は、その状況を見抜くことができなかったという点において、大きな責任があると感じております。 
 そして、いま、この国民にとって非常に重要な問題に対して、政府・与党は安部総理の強力なリーダーシップのもとで、可及的速やかに本来あるべき姿、国民に資するための制度として再構築するために全力で対応しております。特に社会保険庁の解体と日本年金機構への移行にあたっては、「親方日の丸的な体質」の改革を最大の目的として、ぬるま湯的な労使慣行が長年、続けられてきたことなどの悪弊からの脱却を必ず実現させ、国民の信託に耐えうる組織・制度に生まれ変わらせます。また、現在の問題にも一つひとつに迅速に対応しております。先ず、宙に浮いた状態の5,000万件の保険料納付記録の照合については、年内の完了を目指し、遅くても来年3月までには完了いたします。また、年金保険料の納付履歴は、来年10月までにすべての加入者に通知を完了します。そして、納付履歴の通知は来春から開始し、国民がPCで自身の年金記録を自分で確認できる「年金カード」を11年をめどに導入するなどするとともに、受給に関しては過去の証明書類等が紛失などで現存しない場合において、例えば過去の保険料の領収証などが存在しないといった場合でも、弾力的にその事実関係を第三者委員会で検証するという、当然のことではありますが、国民の立場に立って積極的に年金受給権を認めていこうとしています。よって、皆さんの年金は必ずきちんと戻ってきます。ですから「消えた年金」という表現が一人歩きをしていますが、年金が消えたわけではありません。記録をキチンと残せていないものがあるということであります。お支払いいただいた年金はあなたのもとに戻ることは保障されていますので、ご理解いただきますようお願いいたします。私も皆様の代表として恥ずかしくないよう、しっかりと携わって参りますことをお誓い申し上げます。 
*国の難病対策=特定疾患医療研究費補助
 原因が不明で治療法が確立していない、いわゆる難病のうち、治療が困難で医療費が高額である疾患について医療費の軽減を図るというもの。
 難治性疾患克服研究事業(特定疾患調査研究分野)の対象疾患(現在121疾患)の中から、学識者からなる特定疾患対策懇談会の意見を聞いて選定し、現在は45疾患が対象になっている。市町村民税非課税者及び重症患者は自己負担がなく、その他の方は段階的に負担限度額設定。
(難治性疾患克服研究事業の対象疾患要件)
 (1)希少性:患者数5万人未満
 (2)原因不明
 (3)効果的な治療方法が未確立
 (4)生活面への長期にわたる支障(長期療養を必要とする)
 国の予算は約260億円:内訳治療研究費240億円、調査研究費20億円

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