拉致問題を風化させてはならない

 6月25日、私が委員を務める参議院拉致問題特別委員会で新潟県の視察が行われることになり、私も視察団の一員として参加しました。
 視察では、拉致被害者の一人、横田めぐみさんが拉致された新潟市中央区の海岸付近も訪れました。めぐみさんは1977年11月、中学校からの帰宅途中に拉致されました。私たち視察団は中学校から海岸までの道のりを歩いて確認し、同行した県警の新島健太郎警備部長に、当時の状況等についてお伺いしました。
 めぐみさんは1977年11月、通っていた寄居中学校からの帰宅途中に拉致されました。私たちは中学校から海岸までの道のりを歩いて確認しました。当時、警察も150人体制で捜索したとのことですが、警察犬も途中までは追跡できたものの、拉致された現場の丁字路以降は匂いが途絶え、そこから先は進めなかったとのことです。
当時砂浜だったこの場所から、横田めぐみさんの足取りが途絶えました
 拉致現場を視察した後は、新潟県庁で、帰国した拉致被害者の曽我ひとみさん、蓮池薫さんと面会し、意見交換を行いました。
 曽我ひとみさんからは、ともに拉致の被害に遭った母の一日も早い帰国を望むとともに、年金等の社会保障がなく、74歳になる夫のジェンキンスさんも未だに働き続け、将来の生活についての不安がある旨の発言がありました。
 日本に帰国した当初、曽我さんは2年間、家族と離れていましたが、自分が日本政府の意向に従い北朝鮮に戻らないことで、一番大変なときにできた家族が不幸になったらどうしようかと、一人で泣きながら思っていたことです。最終的に方向性が見えたときは、待っていて良かったという気持ちになったとのことですが、心細い環境の中でもなお家族のことを想っておられたエピソードを聞いて、その辛さに思いを巡らせ、同時に、深く感動もさせられました。
曽我ひとみさんと
 蓮池薫さんからは、日朝合意の中で、「包括的」や「最終的」という言葉があるが、ここには拉致問題、日本人配偶者、遺骨問題などが入り、全体の進展があれば振り切ってしまおうとする北朝鮮の意図が見える。認定された拉致被害者に関する新たな情報はない。拉致問題をうすめて、なんとなく押し切ってしまおうとしているのではないか。北朝鮮に騙されないためにも、日本全体の知恵・意思を見せなければならない、との発言がありました。
 拉致問題の解決については、日本国民が納得することはもちろん、被害者家族が納得する必要があり、私も北朝鮮にいる間他の多くの被害者を見てきた。その人たちの帰国がないままに幕引きをされてしまっては、私達も納得できないし、多くの人が救われないままとなる。全員帰国が拉致問題解決の最低限のラインである、とおっしゃっておられました。
蓮池薫さんとの意見交換
 私から、現在の生活状況についてお伺いすると、蓮池さんは、支援法については心強く思っているが、現在給付金は辞退している旨の発言がありました。というのも、24年間拉致されていたことによる損害は、もとをただせば北朝鮮の問題であり、北朝鮮が損害賠償を払うべきであること。従って、被害者全員への損害賠償が必要であり、「重大な犯罪」と主張している日本政府としても、国として筋を立てずにうやむやにしてしまえば、世界に対する恥さらしである。北朝鮮からの賠償を得て、それで初めて「自分」を取り返すことができる。そこに私は老後の期待をしている、との発言があり、強く印象に残りました。
私からも何点か質問をさせていただきました
 また、日朝合意については、リスクを負っての決断であり、評価しているとの発言がありました。先に制裁解除をするなど日本は焦っているとの分析があるが、北朝鮮と根比べをしても仕方がなく、大事なことは前進することだとおっしゃっていました。
 拉致問題をめぐっては、先月、北朝鮮が拉致被害者の再調査を行うことで日本政府と合意し、国民の関心も高まっています。北朝鮮の対応次第では、日本政府は制裁措置の一部解除も行う方針です。
 泉田知事とも面会をしましたが、知事は一日も早い拉致被害者の帰国を要請するとともに、「拉致被害者の家族からは、帰国が実現するまでは万景峰号の入港を認めないよう、強く求められている」とおっしゃられ、家族の意向に沿った政府の対応を求めておられました。
泉田知事との意見交換
 拉致問題特別委員の一人として、同じわが国民が味わった悲しみ、辛さを決して忘れてはならないこと、拉致問題は、国家犯罪であり、絶対にあってはならない、風化させてはならないことだということを、改めて強く実感しました。
 拉致問題の解決の前進のためにも、政府認定を着実に広げていくことも重要ですが、何よりも、蓮池薫さんがおっしゃっていたとおり、日本全体、国民の総意としての知恵と意志を結集しなければ、本当の解決には至ることが難しい問題だと思います。
 今回の貴重な体験をもとに、今後もこの問題に関わって参りたいと思います。

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