ふるさと兵庫の地方創生を考える

 地方創生が大きな課題とされています。第2次安倍内閣の最大の政治課題の一つと言っても良いのではないかと思います。長らく、農村部から都市部への人口移動が続き、少子化と高齢化が進行する中で、政府もこの人口減少問題に正面から取り組み、50年後の人口を1億人にとどめる対策をとるとの目標を示すことになりました。
 人口減少対策の観点からも、東京一極集中を阻止することが重要です。なぜかといえば、東京に若い人が集まれば集まるほど日本の人口減少に拍車をかける結果となるからです。
 東京の合計特殊出生率は1.13、これに比して全国は1.43、兵庫県は1.42です。東京に若い男女が集まると、単純に考えても、この差の0.3の分だけ子どもが増えない計算になります。それだけ東京に集まった若者の未婚化・晩婚化は著しいのです。
「自然減」と「社会減」
 日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、兵庫県の人口も2009年の560万人から毎年約1万人減少してきています。日本の人口減少の第一の要因は少子高齢化ですが、兵庫県の場合は少子高齢化による「自然減」とともに、兵庫への移住者よりも兵庫からの転出者が多い「社会減」がここ数年大きく影響しています。
 東京都は平成9年以降18年連続転入超過になっています。平成26年は10万9,408人、対前年1万2,884人増でした。東京圏に全国の人口の28.1%が集中する一方、関西圏は14.5%、兵庫県は4.4%。資本金50億円以上の大会社の本社所在は、東京圏が55%であるのに対し、関西圏は15.2%、兵庫県は2.7%です。関西圏と兵庫県は、いずれもこの20年で各々約5%、約0.6%地位を落としています。
 兵庫県の人口が増加していた頃は、自然減を社会増が上回って全体として増加していましたが、今や両方とも減少に転じています。2014年の兵庫の転出超過は7,092人で北海道、静岡に次いで全国3位となりました。全国的に見ても経済力があるわが県が3位であるのはなぜなのかということを、今一度考える必要があります。
 「自然減」対策としては、まず少子化対策、つまり多子型社会の構築と子育て環境の整備が必要です。国は、2014年の骨太の方針で、日本の人口を50年後の2060年代でも1億人を堅持する方針を掲げました。このためには、現在1.43の出生率を2025年1.6、2030年1.8、2040年2.1に回復することが必要となります。
 兵庫県の出生率は現在1.42ですが、このままいくと2060年には400万人を切る計算となります。現在の出生数4.4万人を保ちながら2035年1.8、2050年2.01と出生率を上げていくとすると、2060年には440万人程度見込めるというのが県の推計ですが、いずれにせよ出生率2が、大きなターニングポイントとなります。
 少子化対策については、私も過去何度かにわたって、提言等でご紹介しています
http://suematsu.org/proposals/detail/1769
http://suematsu.org/proposals/detail/1770
http://suematsu.org/proposals/detail/1771
が、兵庫県としても、出会いサポートセンターの東京出張所を開設するなど、様々な取り組みを行なっています。
 
 出会いサポートセンターは兵庫県版お見合い機関として機能してきており、昨年は200組弱の成婚数になったとのことです。これまでは県内の男女を対象としていましたが、この度東京に勤務等している人にも拡大することになったとのことです。こうした着実な取り組みが一つずつ結実することが、出生率向上の原動力になると信じています。
東京一極集中の是正
 社会減対策には東京一極集中の阻止、是正、そして東京からの人や企業の移転を促進する必要があります。つまり、これ以上兵庫から人や企業が出ていくことを防ぐ対策が必要です。
 現在国としても地方創生に真正面から取り組んでいますが、更にこの流れを促進させるためにも、税制改革による大きなバックアップを提案したいと思います。
 まずは、企業を呼び込むために法人税制の改革が必要だと思います。現在安倍政権では、最終的に法人税を20%台まで引き下げる法人税改革を検討していますが、国内の地方格差を是正するためには、東京は据え置き、他の地域、例えば大阪は1%、兵庫は3%、四国は6%というように、地域別の軽減税率を採用して、企業や人の地方分散を促すのも一つの考えだと思います。
 次に地方税の改革です。現在地方税では通常の課税水準を超えて独自の上乗せ課税が出来る超過課税の制度があります。兵庫県でも勤労者の福利厚生を進めるための法人県民税の超過課税、産業の育成、産業基盤の充実などのための法人事業税の超過課税、平成16年の台風23号被害の経験から災害に強い森づくりを進めるための県民緑税などがあります。
 しかし、逆に地方自治体独自で減税することはできません。これを可能とし、つまり一定の限度内で地方団体が減税して、企業や住民の立地促進を図ることができるようにするのです。このことにより、企業にとっては税負担の軽い地方が、移転先の有力な選択肢の一つに浮上することになります。
 もちろん過疎地域の地方自治体ほど財政力に乏しい現状ですから、国がこの減税分を交付税等で補てんする制度も同時に必要となります。従って、導入には総合的な観点からの検討が、まずは必要になってくると思います。
 ヒトの移動を促すという点では、住民税の地域別課税も検討の余地があると思います。もともと住民税均等割は、かつては自治体の規模によって税率が異なっていました。大都市は年3,000円、中都市は年2,500円、人口の少ない市町村は年2,000円でした。しかし現在は年3,000円に統一されています。
 税率を大都市ほど重く、農村部ほど軽くする制度を入れれば、都市から農村への移住を促す可能性があると思いますが、これも財政支援と表裏一体として考えなければならないと思います。
「人」が創るふるさと兵庫
 もう一つ重要なのが、国家戦略特区の活用です。現在、関西圏、京都、大阪、兵庫は国家戦略特区に指定されています。特に、医療を中心とするイノベーションとまちづくりの推進を中心に規制緩和により民間活力を発揮し、地域の振興、ひいては日本の活力を高めようとする試みがあります。
 すでに、神戸では医療産業都市構想に基づき再生医療、創薬、医療機器開発、先端医療、先制医療などが推進されています。あわせて、スーパーコンピュータ「京」や大型放射光施設「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設「SACLA(さくら)」などの科学技術基盤の活用、そしてロボットや先進機器の開発などが期待されています。
 また、農業国家戦略特区として養父市が指定されています。平野部の大規模農業の振興のモデルに並んで、中山間地農業のモデルと期待されています。養父市の、大屋高原のような地勢を生かした高原野菜、特産品山椒を活用した商品開発、野菜工場のような水耕栽培、大型施設やパイプ温室など施設園芸、キノコなど林産物の活用、バイオマスの推進などへの取り組みは、全国の農村地域にとっての良き先例として、大きな影響力とインパクトを与えると思います。
 いずれにせよ、地方や地域が持つ地域資源や地域の人材を生かして、大都市への人口流出をとどめ、逆に大都市から地方へ、地方の中核都市への企業や人の移動を促し、地方や地域を元気にしていく必要があります。そのために、兵庫も日本の先頭に立って頑張っていく必要があります。
 安倍政権が提唱する地方創生に魂を入れて実行し、成果を上げるか否かは、兵庫を愛する我々自身が、具体的な活動を起こすか否かにかかっています。人が活躍しなければ何も変わりません。やはり、主役は人、兵庫人です。兵庫をふるさととする兵庫人の参画と協働によるふるさと兵庫をつくって参りましょう。

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